第2話｜ちゃんとしていたはずの私が、静かに壊れた理由

沈黙は、弱さではなく防衛だった

はじめに｜ちゃんとしている人、を演じるのは、得意だった。

大丈夫です。
平気です。
問題ありません。

その言葉で、
どれだけ自分を黙らせてきただろう。

社会の中で生きるために、
「ちゃんとしている人」を選び続けた結果、
自分の声が、少しずつ聞こえなくなっていった。

壊れた音は、外には聞こえない。
でも、確かに中では鳴っていた。

この話は、
声を上げられなかった日の記録。
沈黙のまま、ちゃんとしていた私の履歴書。

壊れる前ではなく、
壊れていることに気づけなかった頃の話。

──透明な履歴書・第2話

「ちゃんとしなきゃ」は、防衛だった

病気があっても、
経済的に不安でも、
「大丈夫そうに見せる」ことは
自分を守るための術だった。

弱さを見せれば、
評価が下がる気がした。
迷惑だと思われる気がした。

だから私は、
ちゃんとしている人を演じ続けた。

元気そうな人たちの、沈黙

社会は、
元気そうな人を好む。

ちゃんと働いて、
ちゃんと笑って、
ちゃんと頑張っている人。

私の周りにも、
同じように「元気そう」を
演じている人たちがいた。

ふらついても笑う人。
涙を飲み込んで会議に出る人。

弱さを共有するより、
「頑張ってるね」と言い合う方が
この社会では楽だった。

仮面の下で、音が消えていった

できる人でいたい。
迷惑をかけたくない。

その思いが重なって、
私は仮面を外せなくなっていた。

人前では普通に振る舞い、
家に帰ると、体も心も動かない。

ある夜、鏡の前で思った。

今日は、何も感じていない。
悲しいはずなのに、
涙も出ない。

それが、
静かに壊れていく音だった。

透明な履歴書は、鎧を脱ぐ記録

透明な履歴書を書くことは、
鎧を脱ぐことだった。

社会で身につけてきた
「ちゃんとした人」という衣を、
一枚ずつ置いていく作業。

怖さはあった。
でも、
隠し続けたままでは
私は一生、自分の人生に戻れないと思った。

不完全なまま、生きている

私は、ちゃんとしていない。

体調は不安定で、
不器用で、
完璧とは程遠い。

それでも、
生きている。

その事実を、
ようやく肯定できた。

不完全さを隠さないことは、
弱さではなかった。

終わりに｜沈黙を破るという選択

この物語は、
沈黙の履歴書を破るための一歩だ。

演じ続けることでしか
守れなかった自分を、
もう責めない。

光の下だけが人生ではない。
影の中で呼吸していた時間も、
確かに生きていた。

もし今、
「ちゃんとしなきゃ」という呪文に
疲れている人がいるなら。

鎧を脱いでもいい。
あなたの人生は、
すでに十分、意味を持っている。

• Sound of Life

  物語のためのサウンドトラック

  「透明な履歴書」には、言葉にならない感情を託した「主題歌」があります。 限られた時間の中で録音された、祈りのような3つの旋律。 それぞれの物語の湿度に合わせて、静かに添えました。

• Voice / Reading

  朗読：「透明な履歴書」

  (Coming Soon / 順次公開予定)

  川島琴里の声による朗読と、エピソードトーク。 現在、一つひとつの物語に音を灯す準備をしています。 完成したエピソードから、この場所で公開されていきます。

• Join the Story

  読者参加企画：#あなたの透明な履歴書

  あなたの「影」の物語を、教えてください。 履歴書には書けなかった空白、誰にも言えなかった葛藤、そして再生の瞬間。

  ハッシュタグ #あなたの透明な履歴書 （または #TransparentResume）をつけて、SNSで言葉にしてみてください。 投稿された物語の一部は、今後このサイトやPodcastにて、川島琴里の声で紹介させていただく場合があります。

• For Media & Partners

  メディア・関係者の皆様へ

  「透明な履歴書」は、単なる個人の記録ではありません。 現代社会のシステムからこぼれ落ちてしまった「見えない時間」や「個人の尊厳」に光を当てる、アート・プロジェクトです。

  本プロジェクトの趣旨に共感いただけるメディア様、研究者様、企業様からのお問い合わせを歓迎いたします。 （※本プロジェクトは、合同会社COTOLXの社会活動（CSR）の一環として運営されています）

• 取材・コラボレーションのご相談

• MEO・検索ブランディング（COTOLX）のご依頼